冲方丁「マルドゥック・ヴェロシティ」




マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉

前作「マルドゥック・スクランブル」でイースターの口から語られた、ウフコックとボイルドの別離、
ボイルドが虚無に落ちるまでを描いている作品――
と見せかけて特殊能力者達が激突する冲方X-MENなのかこれは。
ボイルド、ウフコックをはじめとした魅力的な09メンバー、対するは前作の畜産業者を超える変態的な拷問集団カトル・カール、
ある意味カトル・カールよりタチの悪いオクトーバー一族やギャング一家など、常軌を逸した面子が続々と登場してくる。
お気に入りはイースターの原点でもある、三博士一の変人クリストファー。
最初は唖然とした独特の文体も、前作のニューロマンサー風に比べればすんなりと読み解けるように。
オードリーの死の謎、カトル・カールのバックの正体など、ミステリ的な複線を張り巡らせながらも
スクランブル」に着地するためか、最後は駆け足で真相を畳んでいたのがやや残念。