機本伸司「神様のパズル」




神様のパズル

神様のパズル


「宇宙は"無"から生まれた」と、彼は言った。「すると人間にも作れるんですか?無なら、そこら中にある──」
読み終わってからハードSFの皮をかぶった青春小説だと気がついた。
飛び級天才少女と落ちこぼれ大学生の主人公がタッグを組んで「宇宙の作り方」を紐解いていくという話なのだが、
語り手でもある主人公の物理に対する知識が、ちょうど「高校で物理取ってたけど結局はよく分からなかった!」
といったレベルなので、主人公と同レベルの自分も天才少女の説明に助けられて
「なんとなく分かった気がする」レベルに引き上げられながら読むことが出来たり。
内容のほうも物理考察一辺倒ではなく、何故か田植えをしていたり、
エロ画像パワーでグリッドコンピューティングを構築して宇宙開闢のシミュレートをしていたりと
これがなかなか変化があって一気に読み進めてしまった。
他のゼミ生の個性が薄味だったことや、ラストがSF的なアプローチではないのがやや気になったけど
全体としてみると「物理に拒絶反応を示さない」という条件付だけどオススメ。